平成20年度 浄化槽実務者研修会


業界の責任
社団法人岐阜県浄化槽連合会
会長  玉 川 福 和

 昨年の4月25日、参議院に民主党から下水道法第10条第1項の改正案が提出されました。改正案は、下水道法第十条第一項 公共下水道の排水区域内の土地の所有者等が、その土地の汚水を浄化槽(浄化槽法第二条第一号に規定する浄化槽をいう。以下同じ。)で処理している場合における当該汚水に係る排水設備については、公共用水域の水質の保全及び公衆衛生の見地から著しく不適切な場合として政令で定める場合を除き、下水道法第十条第一項の規定は適用しないものとすること。となっており、合併浄化槽は下水道への接続を除外するというものであります。
 この改正案は廃案になりましたが、民主党は、地方自治財政再建のため政権を取って下水道法改正を実現させたいと明言しています。

 岐阜県では、平成19年4月1日に指定法定検査機関の財団法人岐阜県環境管理技術センタ−に「みず再生施設認定制度」が創設されました。その趣旨は合併浄化槽は下水道と同様の性能を持つ生活排水処理施設として、既設の合併浄化槽と下水道との共生を図るために、よりハ−ドルの高い認定基準を定め、認定基準をクリア−したものには認定証が交付されるという制度です。認定基準は4項目に亘っており、平成20年12月現在、県内5万7,200基の合併浄化槽のうち、1万7,600基(ブロワ停止警報機取付待5千600基含む)が認定されています。4項目のうちで、放流水については、透視度30度以上という高い数値が設定されており、平成19年度法定検査適正率96%の中にも、この数値をクリア−できないものがあって、現在8,700基が不適合となっています。この合併浄化槽については、今、業界団体のもとで原因究明と改善に向けた指導を行っております。まず岐阜県では早急にこの制度の認定率を上げなければなりません。それが下水道法改正による接続免除につながり、また設置者に対する業界の責任でもあります。

 当連合会では、平成20年9月1日から岐阜県浄化槽生涯機能保証制度を実施しました。この制度は新設の場合、保証期間は30年で、その後もらくらく契約を締結しておれば保証の対象になります。既設の場合はらくらく契約を締結している合併浄化槽の漏水、ブロワの停止を知らせる警報装置の未設置及び機能異常が対象となります。この保証制度により、設置者に負担をかけることなく、安心して合併浄化槽を使用することができます。

 岐阜県では毎年1回、主催(社)岐阜県浄化槽連合会、らくらく協議会、協力岐阜県廃棄物対策課で、会員、行政、メ−カ−、一般市民も参加して浄化槽実務者研修会を開催して来ました。年々浄化槽を取り巻く法体系が変化します。地域を守るため、知識も技術も進歩することが不可欠です。より良い浄化槽のための研鑽を重ねることが我々の責任であります。

日時/会場

第1回: 平成21年2月24日(火) 10:00〜17:00
長良川国際会議場 メインホール「さらさ〜ら」
(岐阜市長良福光2695−2)
参加者数:653名

第2回: 平成21年2月27日(金) 10:00〜17:00
長良川国際会議場 4F 大会議室
(岐阜市長良福光2695−2)
参加者数:256名

第3回: 平成21年3月6日(金)  10:00〜17:00
飛騨・世界生活文化センター 大会議室
(高山市千島町900−1)
参加者数:152名

 岐阜県においては、浄化槽実務者研修会を平成14年度以来、主催 社団法人岐阜県浄化槽連合会・岐阜県浄化槽らくらくプロジェクト促進協議会、協力 岐阜県廃棄物対策課で毎年行っている。受講者は、浄化槽施工・保守点検・清掃・法定検査に携わる全員と県・市町村の担当者・浄化槽メーカーで総参加者人数は1,061名であった。浄化槽業務に携わる全員が研修会を通じて、より良い浄化槽のために知識、技術を共有する貴重な研修会であり、下水道及び浄化槽を取り巻く情勢や問題点と、施工技術及び維持管理技術の習得のため6時間に及ぶ講習を受け、受講完了者には後日受講修了書が送付される。

岐阜会場(メインホール) 岐阜会場(大会議室) 飛騨試験場

10:00〜10:10
■県挨拶

  岐阜県環境生活部長(岐阜会場)   古田常道
  岐阜県飛騨振興局長(飛騨会場)   武田裕治


岐阜県環境生活部長 古田常道
 施工、保守点検、清掃及び法定検査の皆さんが一堂に会して研修を行っていただくことは意義深いことであります。適正な施工及び管理がされてこそ浄化槽がアピールできます。
県では単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への切り替えを促進するため、単独処理浄化槽の撤去費用の枠を拡大するなどの仕組み作りをしております。
 合併処理浄化槽を普及していただき、豊かな水環境を作っていくことに力を入れて取り組んでいきたいと思っております。

10:10〜11:00
■「生活排水処理の現状と課題」
  財団法人日本環境整備教育センター 企画情報グループリーダー 国安克彦

@ 総務省の報告では、地方圏の現状は、少子・高齢化、人口減少、厳しくなる財政状況の中、地方の現状は、あと少しで、容易に引き返すことができなくなる衰退の淵にある。と地方行政の政策の在り方の根本が問われていると問題提起があった。
A 下水道の問題点として、将来の人口減少の予測値おいて、現状の岐阜県の集合処理は過剰整備となっている。また、高齢化も進み下水道の経費負担は、市町村にも住民にもますます重く圧し掛かる。
市町村は合併処理浄化槽の特性を生かして下水道計画を早急に見直すべきである。
B 新たな情報管理システムの構築では、法定検査の役割を「行政が検査結果を活用し、速やかに改善につなげ、浄化槽の維持管理に関する信頼性を担保するためのシステム」と位置づけた。また、信頼性確保の一端として、教育センターが進める浄化槽CPD制度の創設についての説明があった。

11:00〜11:30
■「平成21年度浄化槽推進関係予算(案)」ほか
  岐阜県環境生活部廃棄物対策課技術課長補佐 細井紀也

 平成21年度 浄化槽浄化槽推進関係予算(案)「環境省関係」の概要では、補助金は平成17年度から交付金制度に変更 @循環型社会形成推進交付金 A地域再生基盤強化交付金の中の汚水処理施設整備交付金の2本立て。
 県の浄化槽設置整備事業関連の概要では、@単独処理浄化槽撤去費補助の対象拡大 A合併処理浄化槽切り替え促進リーフレットの配布 B岐阜県浄化槽生涯機能保証制度 C平成21年度浄化槽設置整備事業費補助金の内容について説明があった。

11:30〜11:45
■「みず再生施設認定制度の現況と課題」
  財団法人岐阜県環境管理技術センター専務理事 久保田正之

@ 制度の内容 3年間連続して法定検査結果が適正であること及び放流水透視度30度以上、ブロワ停止警報器の設置など、より高度に維持管理された合併処理浄化槽を下水道と同様の処理機能を有する(即ち、下水道につなぐ必要のない)恒久的生活排水処理施設として認定
A 現状 合併浄化槽総数57,200基 
認定対象基数 17,600基 
認定率30%
B 課題
@ばっ気停止対策・・ブロワ停止警報器の設置推進
A保守点検、清掃未実施・・行政指導の依頼
B放流水透視度30度未満の解消・・浄化槽管理士と検査員が情報交換しながら取り組む。

11:45〜12:00
■「岐阜県浄化槽生涯機能保証制度について」
  岐阜県浄化槽保守点検業協同組合専務理事 窪田浩一

制度の概要説明
目的 浄化槽の適正な施工及び維持管理を推進し、浄化槽の機能異常について岐浄連がその原因を究明し、機能の正常化のための必要な措置を講じる制度を設けることにより、浄化槽が恒久的な生活排水処理施設として水環境の保全に寄与するとともに、浄化槽に対する県民の信頼を確保する。

対象浄化槽 @ 20人槽以下の浄化槽で生涯機能保障登録を行っているもの
         A 20人槽以下でらくらく一括契約を行っているもの
保証制度に基づく措置 @新設の機能異常の是正  A漏水修理(いずれも槽本体のみ)
               Bブロワ停止警報器の設置 Cブロワ修理  
保証期間  新設浄化槽は30年間 らくらく契約の全期間
措置費用の負担 原因者が特定された場合は、当該原因者の負担。新設の施工上の瑕疵はその程度により15万円を限度に岐浄連が負担。

13:00〜16:45
■「ビデオによる事例報告」
 ≪施工≫
  岐阜県管設備工業協同組合 高木雅浩

 補助金の有無にかかわらず、浄化槽工事は「浄化槽工事の技術上の基準」に基づき行わなければならない。また、安全対策のための山留めの実施、湧水対策など現場に合わせた工法が必要。基礎工事では、割栗石地業と鉄筋の組立、コンクリートの打設の現場写真は撮影が必須である。さらに破損時の証明のため浄化槽設備士は写真の保存が必要である。コンクリート打設後の養生は十分おこない、その後本体を据え付ける。水平の確認後、槽の水張りを行う。
埋め戻しには,良質な山砂を用い、石塊等が混入しないよう注意する。水締め、十分な突き固めを行い、上部にスラブコンクリートを打設する。

 ≪保守点検≫
  岐阜県浄化槽保守点検業協同組合 窪田浩一 横井誠 梅田晶則 高橋真澄

 浄化槽管理士は画一的な作業に陥りやすい、各型式の特徴に沿った保守点検が必要。各型式の特徴を熟知する。各社の対応事例を報告。
フジクリーン工業海S型:担体閉塞の除去方法と高負荷運転時の移送量調整の必要性について。
鞄立ハウステックKGF-2型:高負荷時の全面ばっ気運転の方法と担体閉塞解除の方法について。
ニッコー劾SR-2型:間欠定量ポンプの掃除は必須。
潟NボタHY型:一次処理の固液分離機能アップのため垂直流入管の取り付けについて。
 各々高負荷時の二次処理閉塞時の解除方法として、ステンレスパイプを用いた攪拌を実施し、その注意点を説明した。また、継続的に水質を確保するためには、個々の原因を明らかにして対策を講じなければならない。

 ≪清掃≫
  岐阜県環境整備事業協同組合 浄化槽部会 山本幸男

 浄化槽の各単位装置の機能を十分引き出し、浄化槽の所期の機能を十分に発揮させるには、1年に1回の清掃でどの様な清掃を実施するかが、重要なポイントになります。今回は、1件でも多く「みず再生施設認定制度」に適合する浄化槽を増やすためには、適正な清掃を実施し、一次処理の清掃の確認と、各メーカー毎の二次処理の清掃の方法を撮影したビデオと共に清掃方法の一例として紹介しました。
 一次処理の嫌気ろ床槽は、圧力水によるろ材洗浄の基本作業と閉塞時にはステンレスパイプを用いての強制攪拌を行なう応用作業を紹介いたしました。
 二次処理については、各型式において逆洗の方法、逆洗作業を実施しながらの引抜等を紹介し、担体流動槽等に於けるステンレスパイプを用いての強制攪拌を行い、攪拌後どこからどの様に剥離した汚泥を引抜き、装置の洗浄時のポイントなどもあわせて紹介いたしました。
今後は、保守点検からの情報提供と清掃担当者の知識の向上がポイントになり、現場の状況に応じた高度の清掃を実施しなくてはなりません。

 ≪法定検査≫
  財団法人岐阜県環境管理技術センター 神戸信宏

保守点検業者と共同して水質改善を行った対応事例を報告。
潟NボタHY型:低負荷時には、逆洗からエアーを逃がし担体の流動性を遅くして生物膜を付着させやすい状況を作る。生物膜が付着したら徐々に旋回流を上げる。
大栄産業皆CP型:担体閉塞をステンレスパイプを用い解除。閉塞予防の措置として、常時逆洗運転を1週間程度実施。その際移送水量を循環量相当に設定。
潟_イキアクシスKRN型:担体の流動性を測定。流動量の減少を確認後、ステンレスパイプにて、担体と汚泥の固着をほぐす。その後、汚泥を1次処理に移送。担体流動量の確認。それでも回復しない場合は、二次処理の清掃実施。
水質不良の原因は複数ある場合もあるので、原因を1つ1つつぶしながら対策を立てなければならない。また、対応策としては将来に向けての予防措置も必要である。

16:45〜16:55
■「総括」
  社団法人岐阜県浄化槽連合会会長 玉川福和

 改善できた事例の発表ばかりで、改善できなかった事例も上げで比較対象を行う必要がある。
 浄化槽の工事の基準は、補助金が付く場合でも付かない場合でも工事基準は同じであることがわかった。しかし、実態はこれだというものを今度は示す必要がある。悪い工事を法定検査で指摘して、直らない工事の内容をオープンにして皆さんから意見をいただくところへ進んでもらいたい。
 法定検査の事例では、放流透視度が30度以上という表現でまとめている。これは、外部の国土交通省なんかに言わせると、「合併処理浄化槽はたかが知れている。透視度30度なんて良くないんだ。下水道の放流水透視度は1メートル以上である。」と言う。トータルで見れば、合併処理浄化槽放流水が河川に流入する段階の透視度の平均値はいいと思っている。しかし、透視度30度で止まった表示で終わると、30度以上の実態はどうなのか?、合併処理浄化槽は透視度30度までかとの評価になるので、法定検査の事例は1メートル指標で行うべきである。でないと自らブレーキをかけて、壁を作っていると感じられる。
 あとは手抜きの実態について十分検証する必要がある。清掃業務において「ここはどうも手抜きだ」と思われる事例を、次回は法定検査から発表していただくことを期待して総括とします。

16:55〜17:00
■閉会挨拶
  岐阜県浄化槽らくらくプロジェクト促進協議会会長 中村保

 参加された方は、本日の研修を振り返っていただき、みず再生認定制度と岐阜県生涯機能保証制度について、会社に戻られてからもう一度勉強を社員のみなさんとしていただきたい。
 浄化槽の消毒切れの事例の中で、放流からの逆流により槽内水位が上がり消毒切れが発生している。浄化槽工事の方は、放流先の状況は農繁期など1年を通じで大丈夫なのかということも突き詰めて施工計画を立てていただきたい。
 本日は長時間にわたる研修、お疲れ様でした。