平成21年度 浄化槽清掃担当者研修会


 浄化槽が国民から信頼され、下水道に代わるものとなるために、業界・業者の業務に対する姿勢を正すとともに、良好な放流水質を確保させるための清掃を実施し、すべての浄化槽を「みず再生施設認定制度」に認定させなければならない。
 岐環協はこの目的の達成のため、これからの清掃作業(技術)や汚泥減量化対策、保守点検担当者等との連携の必要性等について研修会を実施した。

日時/会場

第1回: 平成22年1月25日(月) 13:00~17:00
長良川国際会議場 4F 大会議室

参加者数:245名

第2回: 平成22年1月26日(火) 13:00~17:00
岐阜県環境会館 4F 会議室

参加者数:142名

■挨 拶
  1/25 田中剛浄化槽部会長
  1/26 牧野好晃副理事長

 今後、「ひもつき補助金」が廃止され、地方が自由に使える「一括交付金」となる。また、事業仕分けにおいては、下水道事業費5188億円が国から地方へ移管されることとなった。昨今の経済状況や将来的な人口減少等と併せ、下水道事業は大きく見直されることになる。
 また、1月22日に民主党環境整備議員懇話会から国土交通大臣に対し、今国会で下水道法の改正がされるよう要望書が提出された。こうした背景もあり、浄化槽に対する期待は高まっている。しかし、浄化槽が下水道に代わるものとなるためには、浄化槽の構造上、施工上、維持管理上の問題点等を改善し、浄化槽に対する信頼性を確保しなければならない。
 清掃は単に引き抜くだけの時代ではなく、浄化槽の機能を回復させ、良好な水質を確保するための重要な役割を担っている。下水道法の改正が間近となった今、清掃業者として自らの襟を正し、より確実に清掃作業を行ない、全ての浄化槽を「みず再生施設認定制度」に適合させることを目標に業務に取り組む必要がある。


講 演
 演題「これからの浄化槽清掃技術と汚泥減量化対策」

  講師 財団法人日本環境整備教育センター 
  教育事業グループリーダー 小 川  浩 様

 浄化槽は、従来の構造基準型から性能評価型へと移行されており、コンパクト化、高度処理化が進んでいる。その中でもコンパクト型は、高負荷となり、ろ過部が詰まりやすいため、作業員はこの構造を十分理解したうえで、清掃時には、生物ろ過槽や担体流動槽の逆洗作業行い、引き抜き作業を実施し安定した処理性能の維持につなげる必要がある。
 清掃において汚泥濃縮車を使用することで、し尿処理場への投入量の削減や汚泥処理経費が削減される。また、運搬回数が減ることで温室効果ガスの削減にもなる。
 近年、浄化槽汚泥量が増加傾向にあることで能力不足となっている状況下においては、汚泥濃縮車を活用することでこの対策も可能となる。


調査報告1
 「浄化槽清掃(1ヶ月)以内の槽内(ろ材等の汚泥付着)状況」

  財団法人岐阜県環境管理技術センター 
  浄化槽検査課グループ総括  赤羽根 智加人

調査対象:岐環協各社が契約する浄化槽で、法定検査にて透視度30cm未満であったもの1基
調査時期:清掃を実施した日から1ヶ月以内
調査内容:嫌気ろ材内部及び二次処理の接触材又はろ材内部の汚泥付着の有無を確認

 対象とした53施設(透視度30cm未満)のうち、21施設において嫌気汚泥の体積が確認された。このことから、みず再生施設に認定されていない浄化槽(透視度30cm未満)は、ろ材内部の洗浄にパイプ等を利用した空気撹拌の実施など、通常の作業内容を見直す必要がある。
 ろ材内部の構造を把握せずパイプ撹拌にて清掃作業を行うと、ろ材押えの破損を生じ、ろ材が流出する恐れがあり、事前に管理士と連携を取り合うことが重要。
 清掃時に内部設備の状況確認を必ず行い、不良等があればその状況を記録票に記載するとともに、設置者並びに管理士にその旨を報告・説明すること。またパイプ撹拌等、特記すべき作業を行なった場合も同様にその作業内容についても記録票に必ず記載する。


調査報告2
「汚泥濃縮車分離液の張り水利用による浄化槽機能の影響」
「ばっ気停止による水質の挙動」


 財団法人岐阜県環境管理技術センター 
 技術部次長兼環境技術課長  堀 尾 明 広

 汚泥濃縮車の原理は、車内に汚水を汲み上げ高分子凝集剤を添加し汚泥の凝集処理を行った後、バキューム車の機能を利用して減圧浮上を行うことによりフロック状に形成(凝集)された汚泥と水に分離するものである。
 この汚泥濃縮車で反応させた後の分離水を張り水として利用した場合、浄化槽機能への影響について、処理機能には何ら影響は無く、むしろ分離水に残留した凝集剤の作用で、SSの沈降促進に繋がり、処理水質が早期に安定する。
 ばっ気停止による放流水質の挙動について10基の浄化槽において調査を行なった結果、対象の浄化槽すべてが停止前は20mg/ℓ以下であったBOD値が停止後は最大で160mg/ℓまで上昇した。BODの挙動としては、停止後に新たな流入水により容量の50~60%程度入れ替わる頃(停止後2~3日)から悪化する傾向にある。透視度は停止の翌日から遅くても3日後には悪化する傾向にあり、臭気は、翌日から発生した。
 ばっ気再開後では、BODは再開翌日に1/2程度まで回復し、遅くても6日後には停止前の数値まで回復した。透視度は3~6日で停止前の数値まで回復し、臭気は翌日以降、徐々に感じられなくなった。
 この調査結果の報告後、小川先生より、汚泥濃縮車の分離水を張り水に使用することにより、清掃後の水質管理に役立つこと、また、ばっ気停止後は急激に水質が悪化するため、速やかに回復させる必要があり、この対策の一つとしてブロワ停止警報器の設置も重要であるとされた。


閉 会
1/25 若山繁西南濃支部長 
1/26 吉村敏博副理事長

 透視度30cmを確保するためには、3業者が連携を図り、それぞれの役割を認識し、確実に作業を実施する必要であり、全ての浄化槽が「みず再生認定浄化槽」となるよう本研修会で勉強したことを踏まえ、明日からの業務に生かして欲しい。
 また、浄化槽の処理機能を安定させ、良好な放流水質を得るためには、技術力の向上が重要であり、その技術の一つには汚泥濃縮車を使用した清掃であるので全社導入をお願いしたい。